2009年8月12日水曜日

「柔らかな器ー感覚の境目を行き来する6人の作家」

「器」は容れ物だけでなく、人の度量も指すおもしろい言葉です。「柔らかな器」は想像力でいくらでも変えることのできる美術という枠や周囲の環境などの「器」と、それに対応する可塑性のある「器」をイメージしています。本展で紹介する6人のアーティストは常に変化する周囲の環境という器のなかで、どんな作品=器によって、自分自身の五感と向き合っているのでしょうか。

本展の出品アーティストは30歳前後の若手作家です。ロスト・ジェネレーション(失われた世代)と呼ばれることすらあるこの世代は、泡のような好景気の後に思春期を迎えると、地下鉄サリン事件や阪神淡路大震災がおこり、20歳前後で911がおこりました。この世代の感性には、あきらめと期待の混じった感覚、老いた穏やかさと無防備さが同居する、奇妙なやわらかさがあります。彼らが現代美術の目新しさや、純粋に創るという直感に頼らず、美術というまっさらな器の中に自分なりの方法で無限を作り出していく感覚に寄り添っていただければと考えています。

アーティストの発起による本展の舞台は、銭湯の二階部分です。一階は今も営業中の現役の銭湯です。6名のアーティストの新作を、今は使われていない風呂場や休憩室、脱衣所などさまざまな表情を持つ会場で、是非ご堪能下さい。

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